先日、社内会議(と言っても同族会社なので実質的には身内の集まり)において、運営サイトのPVや収入の低下が話題になった。
その際、某役員から以下の2つのお願いをされた。
- 目先の金儲けに走らないで欲しい。
- 今まで通り、有益かつ独創的なツールを作り続けて欲しい。
その言葉を聞いて、初心を忘れかけていたことに気付いた。
現在運営しているような動的なWebサイトを初めて構築したのは、資金に乏しい某非営利団体に所属していた頃である。今から10年以上前のことだ。
当時、事務局として深く運営に関わっていたこともあり、その団体の公式ページを作ることになった。
金銭的に余裕がなかったので、外注するという選択肢はなかった。検討した末、オープンソースの某CMSをカスタマイズすることにした。プログラムを書いた経験は皆無だったが、見よう見まねで何とかサイトを構築することができた。
その頃流行りつつあったオープンソースの波にうまく乗ることができたおかげである。
どうしても分からないことがあれば、オープンソースのコミュニティで教えてもらうことができた。そのお返しとして、自分が答えられそうな質問を見つけたら、積極的に回答するよう心掛けた。
そのうち、プラグインを自作するようになり、試しに公開してみたところ利用者が現われたことから、次第にプログラミングにのめり込んでいった。
自分で言うのもなんだか、独創的なプラグインばかり作っていた。あまりにもピンポイント過ぎて、「誰が使うのよ?」というプラグインもあった。
プログラミングするのは楽しく、自己表現の最良の手段でもあった。
その反面、プラグインを公開することによる弊害も目立ってきた。
プラグイン利用者からは、「助かりました」「このような機能を追加してほしい」という感想要望に混じり、「うまく動かない」「使い方が分からない」などのサポート的な要求が増えだしたのだ。
いちいち個別対応するのも大変なので、プラグイン公開の際には必ずマニュアルを作成した。(本末転倒だが)プログラミングよりもマニュアル作成の方が時間がかかることもあった。
だが、それでも個別の問い合わせが絶えることはなかった。特に大変だったのは、日本語圏以外からの問い合わせだ。乏しい英語力だけでは足りないので、機械翻訳を駆使して応対した。
そのようなことが繰り返されるうちに消耗が激しくなり、そして限界に達し、プラグインの公開を取りやめた。
直接的な原因は、とあるネガティブな出来事であるが、それまで積もり積もっていた何かが一気に噴き出た結果でもある。善意で無料公開したプラグインに関して、大切な時間を削ってまでサポートする理由が分からなくなったのだ。
プログラミングも、マニュアル作成も、メールでの個別応対も、全て無料。1円たりとも金銭を受け取っていない。
この頃は、Webサイトで金儲けすることさえ考えていなかった。
その後、大規模なWebサイト構築に舵を切った。CMSやフレームワークを利用しない、完全オリジナルのものだ。独創的なツールが利用できるWebサイトを無料公開した。
プラグイン公開と違って、プログラミングに集中することができた。利用者からの要望がほとんどないため、余計な時間を取られる心配もなかった。この頃のプログラミングは、純粋に楽しかった。
その反面、運営するWebサイトからの収入は皆無だった。サイトの有料化や広告収入も考えたが、諸事情により実現しなかった。
この頃には、営利を全く意識しない、非営利サイトも結構作成した。
収入になりだしたのは2011年の終わり。今から4年ほど前だ。
この頃から2年間ぐらいが、Webサイトを最も多くリリースした時期である。収益化を主目的にしたサイトが多いが、非営利サイトもいくつか作っている。
2013年の秋以降、新たにサイトを公開する機会が激減した。
その頃何をやっていたかと言うと、実はあまり記憶がない。おそらく収益サイトを(小手先で)テコ入れすることが多かったのであろう。生産的なことは、ほとんど手掛けていなかった気がする。
アフィリエイト収入が激増したことで、我を見失っていた時期である。節税を含め、お金のことで頭が一杯だった。怖ろしいことに、この状況は最近まで続いていた。
このブログ記事を書いている最中、久しぶりに昔のことをいろいろ思い出した。
自分がWebサイトを運営するのは、もちろん金銭的な理由も大きいが、そもそもはプログラミングが楽しいからだ。他にはない独創的かつ有益なコンテンツを提供することが生きがいなのだ。Webサイトで金儲けする前から、現在に至るまで、自分の本質は変わっていない。
ところが、Webサイトで想定以上のアフィリエイト収入を得るようになってから、そのような大事なものを見失っていた気がする。
現在アフィリエイト収入で生活できているが、初心を忘れると危ない。金儲けや節税といった目先のことを優先すると、稼ぐことができなくなる気がする。
自分の存在価値は、他の人が面倒臭がってやろうとしない役立ちツールを提供することにある。それを怠ったとき、強烈なしっぺ返しが来るに違いない。
一人で作業することが多いが、やはり他人の考えを聞くことは有用である。気付かせてくれた某役員には感謝である。
おかげで、気が楽になった。プログラミングする楽しさも、久しぶりに再確認することができている。